The Ecolabs Centre of Innovation for Energyは、シンガポールの南洋理工大学にあるスタートアップ企業支援センターです。より持続可能な世界を実現するためのソフトウェアソリューションを設計する企業を支援しています。プリンテッド パワー社は、そのような革新的な企業の一つです。
2008年に設立されたプリンテッド パワー社は、ワイヤレスセンサーを作ることに着手しました。この超低消費電力のセンサーは、周囲の自然放熱するエネルギーを採取します。環境エネルギー(アンビエント・エネルギー)とは、太陽光、熱エネルギー、運動エネルギーなど外部資源から取り入れるエネルギーのことです。正しく取り込めば、小さなデバイスを動かすことができます。プリンテッド パワー社のセンサーは、このようにして取り入れたエネルギーだけで動きます。
最小限の設置面積でセンサーのシステムを持つことは、非常にエネルギー効率の良いソリューションとなります。このようなシステムは、分散型エネルギー源で動作するため、耐障害性が向上し、運用が容易になります。スマートハウスやビル、輸送、オートメーション、物流、データ センター、精密農業など、プリンテッド パワー社のセンサーはあらゆる用途に対応します。
プリンテッド パワー社は、IoT(Internet of Things)エコシステムにより、このような多目的な利用を期待できます。各センサーは、Bluetooth対応のスマート デバイスで、その環境からデータを収集することができます。そして、プリンテッド パワー社は、そのハードウェアの製作に取りかかりました。
開発されたプリンテッド パワー社のハードウェアは、充電式電池が装着されているセンサーで構成されていました。あとは、これらの要素をつなぎ、IoTのプラットフォームを提供するための補完的なソフトウェアが必要でした。
当初、プリンテッド パワー社は、シンガポールやインドでソフトウェア開発会社を探していましたが、自分たちの予算とニーズに合う会社が見つかりませんでした。コスト効率の良いところを探している中で、ルドラ・パンデーがボストンでソフトウェア開発とデータ分析を行っていることを知ったのです。
こうして、プリンテッド パワー社は、ディアホールドと出会いました。最初のプレゼンテーションで、彼らは自分たちの技術と要件を説明し、センサーから得られる大量のデータを読み取り、分析し、可視化できるソフトウェアを必要としていました。ディアホールドは、このエキサイティングなプロジェクトに積極的に参加することにしました。
2019年、ディアホールドは、プリンテッド パワー社に合わせたソフトウェア ソリューション開発に乗り出しました。このオフサイト プロジェクトで、ディアホールドはまず調査やリソース開発を実施しました。ハードウェア コンポーネントの理解には時間がかかりましたが、3か月後には、センサーに関する知識に自信を持つことができ、そしてソフトウェアの作成に取りかかりました。
私どものチームは、ソフトウェアのサーバー側とクライアント側の両方を担当しました。IoTシステムとメッセージ プロトコルの設計を行いました。センサーはお客様の用途に合わせて、家庭、オフィス、工場など、様々な場所に設置され、そのデータの読み込みやパターンを可視化しました。
データを見ることで、プリンテッド パワー社の顧客は、センサーのデータや性能を容易に分析することができます。私どもの技術によって、企業は自らの事業運営に対して貴重な洞察を得ることができます。これは、より良い正確な意思決定を行う上で大きな助けとなります。
ディアホールドは、決して大きくはありませんが多才な会社です。米国に本社を置き、ネパールと日本に子会社を持つ当社は、多様なチームを編成しています。フロントエンドの開発とカスタム データの可視化には、Reactとアマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウド プラットフォームを使用しました。データのキューイングには、RabbitMQとPythonを使用しました。また、DjangoとMongoDBとNginxそしてVue JSを採用しました。
このプロジェクトは複雑で、その過程では様々な困難がありました。しかし、これらのハードルは、私どもをソフトウェア開発者そしてプロジェクト マネージャーとして成長させてくれました。これ以外の方法はなかったと思います。
私どもの製品は、多機能で適応性があることが必要でした。パイロット版では、低温倉庫でセンサーをテストしました。目的は、ドアからの熱損失を追跡して防止することでした。ディアホールドは、振動センサーと温度センサー、それにドア近接センサーを組み合わせたシステムを作りました。これらが全て連動して、ドアの開閉を検出しました。ディアホールドは、センサーを設定し、システムから安定したデータ ストリームを受信しました。この入力を視覚化することで、冷蔵倉庫会社はタイムリーに介入できるようになりました。
一つのセンサーで様々なエネルギーを採取することは簡単なことではありません。このプロジェクトで、私どもは未知の領域に踏み込みました。考えながらプロジェクトを進めなければならなかったのです。何度もプロジェクトのスコープが調整されましたが、チームやクライアントとのオープンなコミュニケーションを通じて、その変更がスムーズに行われるよう調整しました。私どもは、素早く決断し、期限内にプロジェクトを完了させるために、懸命に努力しました。
一から作り上げたテクノロジー スタートアップ企業であるディアホールドには、叶えたい野心があります。当社は、ソフトウェア開発、モバイルアプリケーション開発、ウェブアプリケーション開発、その他十数種類の技術サービスを提供しています。プリンテッド パワー社は、グローバルなプロジェクトの規模を拡大したいと考えていました。私どもはそれを理解し、ほとんどの国に適合する製品を設計しました。しかし、残念ながら、試験運用は中国で行われたため、AWSへのアクセスは制限されていました。中国向けにどのように製品を適応させるかを考え出すことが、新たなプロジェクトとなったのです。ディアホールドは、中国の現地チームと協力し、AWSのチームと共同で取り組みましました。これにはさらに2〜3か月を要しましたが、私どもの回復力と柔軟性を証明してくれました。私どもの前に現れるあらゆる困難同様、私どもは今回の困難も克服してきました。
プリンテッド パワー社は、グローバルに展開、中国でも展開しました。同社は、環境発電IoT技術のパイオニアとなり、またその分野における特許も取得しました。その後、同社は、1,000万ドル以上のプロジェクト資金を確保しました。この革新的な製品は、インドネシアやフィリピン、そして中国といった新興国の市場で売り上げが飛躍的に伸びていくと見ています。
同社は、ディアホールドの適応性の高いソフトウェアを使用し、強力な運用管理ソリューションを世界的規模で提供しています。
このプロジェクトには、アジア各地から国際的なチームが集まりました。ディアホールドは、ソフトウェアをネパールのカトマンズで開発しました。ハードウェアは、中国のBluetooth Gateways社から調達しました。ファームウェアのチームはベトナムから、OSのチームはインドから来ました。このプロジェクトは、複雑なプロジェクトを困難な状況下でやり遂げるという、私どもの能力を示すものでした。このプロジェクトを成功させ、私どもは次のプロジェクトへと進みました。